5.フリーダ・カーロとストールのおしゃれ ~選択肢の少なさを活かして~

カジュアルに巻く大人春ストール

 

ハロー令和! 新しい元号になりました! BBA(ババア)だって少しずつ、新しい時代にふさわしい令人(つまり令和のBBA?)を目指したいものですね。

 

さて、春たけなわですが、朝晩など、少し肌寒い時間もあるのがこの季節です。そんなときに持っていると安心なのがストール。BBAに冷えは禁物です。でも、もちろん寒さ対策だけでなく、着こなしとしても抜群のアイテムですよね。

 

そして、私、ストールといえば思い出すのが女性芸術家のフリーダ・カーロ。

 

今回はこの2つについてちょっと語ってみます。まず、ストールの巻き方実践編から。

 

私のトークショーにいらしていただいたことがある方には耳にタコかもしれませんが、ストールを巻くコツとして私がよく言うのは、とにかくきれいに巻きすぎないこと。きちんとしない。むしろ、適当に巻くこと。

 

日本人は几帳面(きちようめん)真面目(まじめ)な上に、きちんと畳んだり折ったりする「折り紙文化」があるので、ストールも端をそろえてきちんと、となりがちです。が、顔がちょっとずつ優しく(崩れて?)きているBBAは、きちんとしすぎると、ちょっと(さらに?)老けて見えてしまうんですね。

 

ファッションとの相性もあります。CAの方のようなコンサバなファッションには、きちんと巻くのが合います。がっ! ふだん使いのカジュアルには、やっぱりストールも、くずしてカジュアルに巻くのが今っぽい。もう少し歳を重ねて立派な(?)おばあさまになれたら、またきちんと巻くのもいいかもしれませんが、BBA以上おばあさま未満の私たちは、もう少しの間カジュアルにストールを楽しみたいものです。

 

くずしてカジュアルに巻くコツ、実は、結構簡単です。

 

まず、用意するのは全身鏡。ストールをバイヤスに折ります(対角線に折るイメージ)。そうすればストールの生地、柄もバイヤスになり、優しいイメージに。たとえ虎の柄や、私の大好きな骸骨(がいこつ)柄のストールを選んでも斜め模様となり、ソフトな印象に!

 

次に、顔の真下にくる部分を決めます。ボリュームや色柄を調整するのです。私は首が短いので、ストールをアゴからやや離します。あまり顔にくっつけると、まるで喉が痛いときにネギを巻いたような姿(かなり昭和的な表現ですね……)になってしまいます。首の後ろ側、背中から前にかけて斜めの線を作るのも、姿よく見せるポイントです。

 

あとは全体のバランスを見ながらクシュクシュさせること。そのとき、垂れているストールの左右の長さをちょっと変えると、おしゃれ度がアップします。そろえなくていい、というか、あえてそろえないほうが粋です。

何年か愛用しているサルティのドクロストール。ちゃんと折って巻くと「首が短いわたしとドクロ」になってしまいますが(涙・写真左)、バイヤスに巻いて首の下を下げ、斜めラインを作るとかなりマシな感じに!!!
春先、ドクロストールとともに大活躍している私物ストールたち。
左の無地ブルー:何年か使い倒したFaliero Sarti(ファリエロ・サルティ)。
真ん中のネイビーに紺のストライプ:この春手に入れた、ユニクロとJW アンダーソンのコラボ「UNIQLO and JW ANDERSON」
右のヒョウ柄とベージュウールのストール:altea(アルテア)。肌寒い花冷えの夜にコートがわりに。

 

2000パターンの巻き方があった?!
ストール巻きの達人、フリーダ・カーロの壮絶人生

 
 

ストールというと私が思い出すのは、フリーダ・カーロ(Frida Kahlo)です。

 

いまなお世界中で人気を誇るメキシコの画家ですが、彼女の人生自体がひとつのアート。アーティストとしての才能にとどまらず、海外では、そのファッションも注目されていました。生前「VOGUE(ヴォーグ)」をはじめ、多くの雑誌で彼女のファッション特集が組まれましたし、死後も、コレクションランウェイで、フリーダから影響を受けたスタイルが何回も見られたくらいです。

 

フリーダの人生は壮絶でした。6歳でポリオを患い、その影響で、右脚は左脚より短く、最終的には切断をすることになります。義足になったのです。また、17歳のときに交通事故にあい、大怪我(おおけが)を負います。痛みを緩和するために医療用のコルセットをし、生涯、30回もの手術をくりかえしました。

 

でも、身体にそうした不自由を抱えていたにもかかわらず、彼女はおしゃれを楽しんでいたと思います。

 

フリーダが大好きな私は、昨年、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum、通称V&A)で開催された「フリーダ・カーロ展」(※)に行ってきました。V&Aといえば、芸術とデザインの殿堂です。いかに彼女が、画家としてだけでなく、ファッションアイコンとして世界に認められているか。これは行くしかないと、ロンドンへ。こういうときの私はフットワークが軽いんです(笑)。
(※)「Frida Kahlo: Making Her Self Up」

V&Aで購入した本『Frida Kahlo: The Camera Seduced』。美しいフリーダ。ストールでいくつもの表情を見せました。

さて、ロンドンに着いたものの、なんと前売り券はすべて売り切れ。朝から当日券を求めて並んだにもかかわらず、数十枚しか売り出されない当日券にもあぶれてしまいました。

 

でも、私は諦めない!

 

チケット売り場のスタッフに「フリーダ展を見に東京から来たのだけれど、チケットを手に入れるチャンスはないのかしら?」と尋ねたところ、なんと「美術館のメンバーになればいつでも見られるわよ」とのお答え! メンバーになるために、一瞬ためらうほどの金額を払うことになりましたが、その場でメンバーになり、仮の会員証をゲット! 気がつけば他の窓口でも、フリーダ目当てのロンドンマダムたちが次々とメンバー登録をしていました。

 

V&Aの常設展示は、任意の寄付を受け付けているものの、基本的に無料で見ることができます。私たちのようなある程度の金額を払えるBBAがメンバーになって、運営を支えているのかもしれないと思いました。

行ってきました! 2018年、ロンドンのヴィクトリア&アルバート(V&A)博物館で開催された「フリーダ・カーロ展」。

展覧会で見た、フリーダを模した数十体のマネキンに着せられた彼女の服の数々。その展示に圧倒されたことは言うまでもありません。立ち並ぶマネキンを見て、「どれも同じスタイルなのに、ものすごく豊かなバリエーション!」と言葉を失いました。何度も手術をくりかえした彼女、そのため、彼女が着ることのできる服のスタイルはすごく限られていました。

 

写真や絵などをご覧になったことのある方はご存じだと思いますが、フリーダは、不自由な脚を隠すために、いつも長く広がったスカートをはいていました。上半身もコルセットを着用しなければならないため、服のほとんどが、ふわっとしたウエスト下丈のスモックブラウス。彼女のファッションは、この組み合わせのみの、ワンパターンにならざるをえなかったのです。

 

そんななかで、フリーダは、最大限にファッションを楽しみ、自分を表現しました。ルーツであるメキシコという国のアイデンティティを発信するために、民族衣装をまとい続けましたし、ストールを使って、いくつもの表情を見せました。フリーダには、2000通りくらいのストールの巻き方があった、という伝説があるほどです。また、大ぶりなジュエリーの使い方も天才的でした。

100ポンドくらいして、ちょっとためらったV&Aメンバーシップカード。この美しい本カードは後日送られてきました。立体的な鳥の指輪(10ポンド!)はフリーダ展のミュージアムショップで。

 

フリーダが教えてくれる、本当におしゃれな人とは?

 
 

V&Aでフリーダの人生に圧倒されながら、選択肢が少ないことは必ずしも不幸なことではないと思いました。フリーダと自分の人生を重ねるなんておこがましいですが、フリーダから学べることはあるはずです。

 

BBAになると、誰しもたるんだり、太ったりします。または、痩せすぎたり。いつしか、着るものの選択肢は狭まります。若いうちはあらゆるおしゃれに挑戦できますが、それは、体力も気力も若さもあるからです。嘆いていても仕方はありません。それぞれ個体差がありますが、誰でも歳はとります。だから悲観してばかりいては時間がもったいない!

 

着られる服、似合うスタイルの選択肢が減った分、そのなかで充実させてみてはいかがでしょう?

 

私たちはもう、あれもこれも着なくていい。好きなスタイルだけを追求し、そればかりでもOK。そのスタイルのなかで、少し表情を変えられれば、なおいいですよね。

 

本当におしゃれな人のイメージって、一つのスタイルに集約されませんか? 多くの人がイメージできる確立したスタイルがある人が、おしゃれな人。フリーダはそれを教えてくれます。

トートバックは、福岡のアート仲間たちへのお土産にしました。メンバーシップで散財してしまったため、お土産は指輪とこれくらいしか買えませんでしたが……、感動はプライスレス!
V&Aメンバーだけが使える素敵なサロンカフェ。混雑するカフェとは大違いな優雅な空間。お値段もなかなか良心的で、観覧中にクロークも使えます。メンバーになって本当によかったと実感した瞬間。ちょっとした大人の贅沢ですよね。

地曳いく子さんの「BBA(ババア)サロン」第1回が開催されます!
第1回のゲストは渡邉季穂さん(トータルビューティカンパニーuka代表 ネイリスト)。
どんな話が飛び出すのでしょうか? トークに加え、いく子さんセレクトのお弁当やお菓子のおもてなしも楽しみなサロンです。
詳細は以下よりご覧ください。
https://eclat.hpplus.jp/article/34925
 

毎月第1・3水曜日更新

更新情報はTwitterでお知らせしています。

地曳いく子(じびき・いくこ)プロフィール

地曳いく子(じびき・いくこ)
1959年生まれ。『non・no』をはじめ、『MORE』『SPUR』『Marisol』『eclat』『Oggi』『FRaU』『クロワッサン』などのファッション誌で30年以上のキャリアを誇るスタイリスト。著書に『50歳、おしゃれ元年』『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』『ババア上等! 余計なルールの捨て方 大人のおしゃれDo&Don't』『ババアはつらいよ アラカン・サバイバルBOOK』『おしゃれも人生も映画から』『おしゃれ自由宣言!』など著書多数。槇村さとるさんとの動画連載「BBA(ババア)チャンネル byさとる×いく子」も好評配信中。http://gakugei.shueisha.co.jp/yomimono/bbach/01.html