6.「ライブ3割・食と温泉7割」のBBA旅 ~いいことと悪いことはセット~

旅で重要なのは「食」、なかでも「お茶」です

 

長かった10連休、いかがお過ごしでしたか? 私はGW前半に、山口~福岡~唐津(からつ)(佐賀県)の3泊4日の旅に行ってきました。福岡在住の“旅友(たびとも)”と、私を含めて3人旅。目的はバンドのライブ……のはずでしたが、実際は、ライブ3割、食と温泉7割のゆる~い旅。でも、BBAにはこれがちょうどよかった!

 

いくら好きなバンドでも、小さなライブハウスでは3時間くらいほぼ立ちっぱなし。昼から張り切りすぎては体がもちません。観光はほどほどに、温泉を巡ったり、ご当地自慢のお菓子でお茶を楽しんだりしてライブに備えるのがBBA流。今回は、行き当たりばったりの旅もいいよね、というお話です。

富士山を眼下に、山口~福岡~唐津のBBA旅へ! テンション上がります。

地方に旅に出ると行きたくなる場所のひとつが、その土地ゆかりの記念館や美術館です。山口ではライブ翌日に「中原(なかはら)中也(ちゆうや)記念館」に行ってきました。「汚れっちまった悲しみに」で知られる詩人の中原中也は現在の山口市湯田(ゆだ)温泉の出身。都会のど真ん中コンクリートジャングルで、ロマンチシズムとは全く無縁の人生を送ってきた私は、改めて純粋な彼の詩に触れて心が洗われるようでした。

 

私が訪れた4月29日は、なんと中原中也のお誕生日。当然、知らずに訪れたのですが、無料で入ることができました。私たち、“もってる”!

 

しかし、ラッキーもあれば、アンラッキーもあるのが旅の(おきて)です。美輪明宏さんも「正負の法則」とおっしゃっていますが、いいことと悪いことはセットで起きる。これ、旅に限りませんけどね。

 

何がアンラッキーだったかといえば、この旅、お天気に恵まれませんでした。山口の湯田温泉に泊まったのですが、どしゃぶりで、楽しみにしていたカフェの足湯に入ることはできなかった。こういうことは、あります。

 

まあ、前日にホテルの温泉や、ライブ前後にハコ(ライブハウスのこと)のそばにある「亀乃湯」(大人390円の銭湯ですがお湯は温泉)に入ったので、湯田温泉を十分堪能したと言えますね(笑)。湯田温泉は彼処(かしこ)に白い(きつね)のモチーフがあり、聞いたところによると狐が見つけてくれた温泉らしいです。

山口県湯田温泉では白い狐が迎えてくれました。

さて、私たちの旅で温泉とともに重要なのは「食」。なかでも「お茶」です。休憩はBBAにとって欠かせませんよね。山口では、山口銘菓「豆子郎(とうしろう)」のカフェで癒しのひとときを過ごしました。ここ、お庭も素晴らしい。和菓子屋さんには、お庭を見ながらお茶をいただける場所がけっこうあるので、見つけると、つい入って、お茶をしてしまいます。降りしきる雨に新緑が()え、とても贅沢な時間を過ごしました。

新緑が映える庭を愛(め)でながらお茶をし、甘味をいただいて大満足。

食べてばかりではなく、少しは観光もしました。印象的だったのは「山口サビエル記念聖堂」。モダンでシンプルな教会で、数十年前に訪れたフランスのヴァンスにあるマティス美術館を思い出しました。パイプオルガンも素敵な礼拝堂には、ザビエル神父が日本に渡ってきた経路や、江戸時代の隠れキリシタン(潜伏キリシタン)の歴史などが展示されていました。隠れて信仰を続けるために、神社など、日本に元からあった信仰のなかに十字架のモチーフを忍ばせて礼拝したりしていたそうです。

ステンドグラスが美しい山口サビエル記念聖堂。

こういう場所に来ると、信仰の自由のなかった時代に思いをはせます。いまは自由に信仰できる時代に生きている私たち、それは(すご)いことだなと改めて思いました。

 

あ、夜はライブに行きました、ちゃんと(笑)。

 
 

うっかり八兵衛に運が回ってきた

 
 

その後、福岡、そして唐津へ。目的は3つです。

 

1.福岡で焼き鳥を食べる
2.唐津で呼子(よぶこ)イカを食べる
3.唐津銘菓 松原おこしの「脇山商店」に行く

 

もちろん夜はライブに行きますが、やっぱり食は大事なのです。

 

福岡の焼き鳥は、前々から行きたかった「藤よし」さんへ。福岡チームが予約しておいてくれて、念願(かな)って訪れることができました。本当に美味(おい)しい! ここの焼き鳥のネギ間は、長ネギでなく、玉ねぎなんです。そういえば北海道で食べた超美味な焼き鳥も、長ネギではなくて玉ねぎでした。焼き鳥といえば長ネギしかないと思っていた江戸っ子の私は井の中のカワズでしたね。

 

お店に入ってからムラムラと焼き鳥探究心が燃え出した私は、福岡出身の知り合いのPRにSNSで連絡! 彼が「絶対食べるべし」と薦めてくれたふぐ雑炊やウニの茶碗(ちやわん)蒸しも絶品。たらふく食べて飲んで1人3000円。またすぐに行きたいです! 「どこでもドア」プリーズ(笑)。

福岡の焼き鳥「藤よし」さん。ふぐ雑炊やウニの茶碗蒸しも絶品でした。

そして、呼子イカを食べに、いざ唐津へ。しかし、またしても天気は味方してくれず……、車を飛ばして呼子まで来たものの、海が荒れてその日は漁に出られなかったということで、念願の透き通る生のイカ刺身を食べることはできませんでした。それでもイカ定食(げそは唐揚げにして出してくれます)とサザエのお刺身をいただき、一杯飲めば、大雨のなかでも(おの)ずと気分は上がっていくものです。

生のイカ刺身は食べられなかったけど……、これで満足♪

もう一つ、私たちが行きたかったのが、松原おこしの「脇山商店」です。このナゾの食べ物、去年糸島(福岡県)の市場の片隅で偶然発見し、あまりの美味しさにびっくり!「虹の松原」にある「脇山商店」に行くと出来立てを買えると聞いたからには、行かないわけにはいきません。

 

その場で試食すると、さすがに今朝出来たばかりは違う! 微妙に柔らかく、口に入れると黒砂糖の絶妙な風味が広がっていく、独特で癖になる味わいでした。包装もかわいくて、お土産(みやげ)用に2個購入しました。

これが松原おこしです。松があしらわれたパッケージもかわいい。

ちなみに「虹の松原」は、道の両側に日本では珍しいまっすぐな松が何万本と植えられている景勝地で、まるでハワイのノースショアをドライブしているようです。もう私の目には、松の木というより、ハワイのパインツリー。この日も降ったり止んだりの雨がマイナスイオンを大発生していて、癒やされました。

 

本店から出てドライブすると、次から次へと「松原おこし」のお店が出現。本家とか総家とかが立ち並ぶ「松原おこしストリート」! で、しばらくドライブを続け大原へ。ここでの目的は「大原老舗 大原松露(しようろ)饅頭(まんじゆう) 鏡店」です。

 

こちらのお店は、買った松露饅頭を、店内にあるベンチに座り、サービスで出されるお茶と一緒にいただけます。ガラス越しに美しいお庭を堪能しながら。お饅頭は好きですが、BBAともなるとそう何個もいただけません。浮かれて箱で買って帰っても食べきれなかったりします。そんな私たちにとって、このシステムはありがたいものです。

大好きなお饅頭。BBAになるとそう何個もいただけないけれど、食べたい気持ちは不変です。

小さなお饅頭2個と温かいお茶を一杯いただく幸せ。お店を出ると近くに「鏡山(かがみやま)」というなだらかな山が見えてきました。福岡の友人たちは、子供の頃にここに登ったことがあるとのこと。鏡山の(ふもと)にある「鏡山公園」でつつじ祭りが開催されていることも知り、山に登ること(もちろん車でですが)にしました。

 

天候が悪く、肌寒い。普通なら諦めるような霧のなか、頂上まで車で行くと、私たちは果敢に車から降り公園に向かいました。すると、人影がほとんどない霧がたちこめた橋の向こうには、幽玄(ゆうげん)の世界が広がっていた。霧のなか、池に映る松や、ぼんやり見え隠れするつつじを3人だけで堪能(たんのう)するという贅沢(ぜいたく)が待っていました。

鏡山公園には、天候が悪いおかげで(?)幽玄の世界が広がっていました。ぼんやり見え隠れするつつじ公園を3人占めできた贅沢に感謝。

ところがっ! つつじは美しいけれど、気がつくとすごく寒い。何しろ冷えに弱いBBA3人組です。どうしたらいいのと弱気になり、山を下りながらグーグルマップを見ていたら、なんと、ありました、温泉です。源泉掛け流し露天風呂付き大人600円「鏡山温泉茶屋 美人の湯」で日帰り入浴して、心も体も温まることができました。

 

行き当たりばったりで、こんなに運が回ってくるんだなあと、しみじみと幸せになる旅でした。『水戸黄門』のうっかり八兵衛(はちべえ)のように食べてばかりいただけなのに(笑)。でももしかしたら、行き当たりばったりで自由な余白があったから、運が回ってきたのかもしれませんね。

 

行きたいところがたくさんあって、スケジュールをきっちり決める旅もいいけれど、体力が限られるBBAには、ゆるい旅もオススメです。

 
 

唐津に行かなくても、唐津焼を買っていた!

 
 

最後に、この旅行で、自分が歳をとってちょっとだけ成長したなと感じたことを。

 

唐津で、唐津焼の店を訪れたんですね。お酒を注ぐのにいい器や小鉢を見つけて、これでお酒を飲んだら素敵だな、豆剣山をおいてお花を活けるのもいいなと想像したのですが……、途中で、いや、まてよと。なんだか見たことがあるぞ。デジャブ?! と思いとどまりました。わが家には、棚が(たわ)むほど食器がパンパンに入った食器棚が待っているのです。本当に欲しかったらすぐに買っていたのかもしれませんが、どこか迷いが出てしまい、いったん物欲を抑えたのです。

 

家に帰ったら、ありました、同じような唐津焼の器がいくつも! 唐津に行かなくても、知らずに唐津焼を買っていたのです!

 

とはいえ、昔の私なら迷わず買っていただろうと思います。でもそうした結果、わが家には使わないものが増え、反比例するように、貯金が減っていった……。欲しいものを前にしても、いったん立ち止まることができるようになった。BBAもちょっとは進歩しているのかもしれません。

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地曳いく子(じびき・いくこ)プロフィール

地曳いく子(じびき・いくこ)
1959年生まれ。『non・no』をはじめ、『MORE』『SPUR』『Marisol』『eclat』『Oggi』『FRaU』『クロワッサン』などのファッション誌で30年以上のキャリアを誇るスタイリスト。著書に『50歳、おしゃれ元年』『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』『ババア上等! 余計なルールの捨て方 大人のおしゃれDo&Don't』『ババアはつらいよ アラカン・サバイバルBOOK』『おしゃれも人生も映画から』『おしゃれ自由宣言!』など著書多数。槇村さとるさんとの動画連載「BBA(ババア)チャンネル byさとる×いく子」も好評配信中。http://gakugei.shueisha.co.jp/yomimono/bbach/01.html