#01 誰がねこの首に鈴をつける?/Who will bell the cat?

【ぼく】4月16日
 
こかりの実家の裏庭で子猫を拾った。
目を開けずに、ミーミーと弱々しく鳴いていたので近所の動物病院に連れていった。こかりが学生時代にバイトをしていたところ。
幸い目やにでくっついていただけのようで、薬品を染み込ませた綿棒でなぞっただけで、子猫のまぶたはぱちりと開いた。瞳は大きく、まんまるで、薄い色をしていた。
「よかった」こかりは、子猫と長いこと見つめ合った後、
「この子、私を母親として刷り込んでいるんじゃないかしら?」と、真剣な顔で言った。
「刷り込みをするのは鳥だけだよ」僕は、少し(あき)れながら言ったが、こかりは取り合わず、
「たいら君、私決めたよ。この子は私が育てるから、母として」と宣言した。結婚する前からこかりはよく突拍子もないことを言うのでこういうのは慣れっこだけど、猫とはいえ、新しい命の扱いをこんな簡単に決めていいのかなあ?
しかし、こかりは、あっという間に引き取り話を進め、必要な書類にサインをし、ワクチンと去勢手術の予約もし、大量にもらった試供品を僕のバッグに詰めこんだ。こかりはいつもこうだ。良く言えば決断力がある、悪く言えば……やめておく。しかし、クーラー代すら(まかな)えない我々に扶養家族ができるなんて心配だよ。

子猫は白黒のパンダ柄だったので、ホワンホワンと名付けた。
帰り道、こかりは「この子、私たちの招き猫になってくれるかもしれない、仕事が一杯入るかもよ」と(うれ)しそうにしていたけれど、パンダ柄の招き猫なんて見たことないよ。

 

【ミー】April 16th
 
あさからストレンジなことばかり。めをさましたはずなのになにもみえない。リボーンみたいにボディーがかるい。おまけに、きのうまでのことがおもいだせない。こまった。だれかのにおいがしたので「ミーはここだよ!」ってさわいだらだっこしてもらえた。そのだれかはミーにはなしかけてきたけれど、なにをいっているのかわからなかった。タイラーがいうことはぜんぶわかるのに。
 
どこかのへやについたら、ぎゅっとおさえつけられて、コールドななにかをまぶたにおしつけられた。あわててにげようとしたけれどむりだった。ミーはどうされちゃうんだろう。
あきらめてじっとがまんしていたらまぶたがひらくようになった。ひさびさのひかりはシャイニーすぎたのでぼーっとしていたらいきなりハグされた。ここにはこんでくれただれかかな、こえがいっしょだ。タイラーみたいだけれどちょっとちがう。シャムとミケくらいちがう。
 
それからミーはカーにのせられた。まどのそとのピンクフラワーがきれいだった。
まどにうつってるベイビーキャットにハローってしたらまったくおなじハローをかえしてきた。はっとして、テールをふったらおなじようにふってきた。
そりゃあボディーがかるいわけだ、なぜだかぼくはベイビーになっていたのだから。
 

毎月第1・3火曜日更新

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北澤平祐プロフィール

北澤平祐(きたざわ・へいすけ)
イラストレーター。東京都在住。アメリカに16年間在住後、帰国しイラストレーターとしての活動を開始。
多数の書籍装画や、花王、東京ソラマチ、渋谷ヒカリエなどのキャンペーンビジュアル、ファミリーレストランCOCO'Sのメニューイラストや、洋菓子のフランセ、キャラメルゴーストハウス、KENZO Parfumsの商品パッケージ等、国内外の幅広い分野でイラストを提供。
オフィシャルサイトwww.hypehopewonderland.com